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 絶滅危惧種のツルギキョウの出現
 2020年9月5日、新しく開かれた田んぼのあぜ道の脇で、いつも沢山池の植物を調査して下さっていた郡司さんにツルギキョウの花を初めて教えていただいた。調べてみると神奈川県で初めて1994年に平作3丁目で採集され、絶滅危惧1Aに指定されている。環境省のレッドデータでも絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少な植物である。葉は心形でキキョウ科のつる性植物である。翌年の4月、田んぼのあぜや新しく造られた道の脇や切り開かれた樹林地の斜面から多数のツルギキョウの芽が現れた。その多さには驚かされた。何十年も眠っていた種子に陽が当たり発芽のスイッチ入ったのであろう。植物は環境の攪乱(かくらん)・草刈り等よって様々な種が現れてくるので、里山を整備する楽しみでもある。
 
   
    里山の環境保全を目的としている当地であるが、ツルギキョウは聞き慣れない植物であり、どのように管理すればよいかがわからず、ただ見守るだけであった。沢山池の里山で多数出現したことにより、神奈川県では2022年絶滅危惧ⅠAからⅡ類になったが、あれほど多く出ていたツルギキョウも年を追うごとに消えていっている。
   
    
 ツルギキョウの保護・管理について、経過を記しておきたい。田んぼのあぜから発芽した個体は、周りに絡みつく植物がないと大きく育たない、つるが伸びないで生長ができなくてもその年だけは多数の花と液果の果実をつけた個体も見られた。液果の果実の中には多数の種子が入っていて、実が落ちた場所から多数芽吹きしている個体がある。つるが絡み合って生長して、花が咲いても小さな花で実も小さく、花が咲く前に枯れてしまう個体が多く見られた。近くに横須賀ごみ処理施設が建設されることになり、その環境予測調査の中でツルギキョウが発見され、神奈川県では大変希少な植物であることから、4箇所13個体を移植をして4年間(平成27~平成30)に及ぶ経過観察が行われた。結果は、移植による保全は大変難しく、唯一ハイキングコース脇に残っていた2個体も、秋には全部枯れてしまったという報告であった。また、多年草であるツルギキョウは、花をつける前に枯れてしまっても根の部分が生き残っている可能性があり、翌年の芽吹きを確認する必要がある植物である。刈られた後に芽吹いてくる個体もあり、草刈りとの関係を見ていくことが大事である。
   
   沢山池の里山では、保全されてきた5箇所で毎年芽吹きを確認している。3月までにあぜ道や林縁の草刈りを行い陽が当たるようにして、4月の芽吹きを促している。生長の過程では、周りの高茎草本や樹木の繁茂によって陽が当たらなくなる環境の変化に敏感で、被陰に弱い植物であることがわかってきた。絡んでいる植物を残しながら周りの草本の葉を落とし被陰しないように管理していくことが必要ではないかと考えている。横須賀では、毎年衣笠公園の散策路でいつも草刈りの管理がなされているところで2個体を確認している。また、昨年、横須賀市の植物・昆虫調査では、平作川源流のハイキングコース脇で5個体を確認した。また、観音崎公園で樹木の伐採の後発芽の情報がよせられた。2024年度は、沢山池の里山でも多数芽吹きがみられたが、花や実をつけるまで生長した個体は見られなかった。絶滅危惧種に指定されている訳が、生長のために適切な管理をする難しさの中でわかってきた。ツルギキョウを保全していくために、毎年発芽数を記録し個体数が減ってきていないかを把握して、これ以上減らないように管理の仕方について試行錯誤を続けている。4月にどれだけ発芽してくるかを待ちながら見守っている。
 
   
   
   
   
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